KONTAKTE
ドイツの作曲家カールハインツ・シュトックハウゼンのキャリアにおけるアイロニーのひとつは、音楽に対する彼のラディカルなアプローチの仕方――かつてはもっとも難解な前衛主義の極みであった――が、フィルターを通してポピュラー文化になってしまったことである。この電子音楽の理論的なパイオニアの影響は、ビートルズのスタジオ実験にも及び(とくに「サージェント・ペッパー」に顕著)、今日のテクノ・レコードのサンプリングにもまだ聞き取ることができる。 新時代を画した作品「コンタクテ(接触)」(1959〜60年)では、聴覚体験の勇ましくも新しい世界が導入され、伝統的な音楽では展開が線的に流れるが、それに代えて、より大きな文脈とはかかわりのないそれぞれ特定の音楽的身振りの「瞬間(モメント)形式」――シュトックハウゼンが“現在”の正当性に意識を集中するときのキャッチフレーズ――という概念を重視する。彼は純粋に電子音だけの作品という独創的な考えを思いついたが、このセカンド・ヴァージョンでは2人の生身のプレーヤー(ピアニストと打楽器奏者)が加わって、あらかじめ録音された一連の周波数と交流、つまり“接触”する。 第一印象では、「コンタクテ」は35分間にわたって続く意味不明の混沌とした騒音としか思えないかもしれない(もっともこれは、逆説的に聞こえるかもしれないが、非常に高度のレベルまで構想が練られているのである)。理論は忘れて、音楽に科学的客観性という威信を付与するといった非現実的な夢は忘れて、ただひたすら、げっぷ音やガーガーいう音、ブーンという音など、電子的な音の流れに耳を傾けてみよう、そうすれば終末部にくるころには、それらの音も穏やかな雲のようなもやに変わっていることだろう。それは目の覚めるような音風景であり、現代音楽における革命のとりわけ重要な時期に関するドキュメントである。(Thomas May, Amzon.com) レビュー ![]() 懐かしい電子音を楽しむ
昨年亡くなった現代音楽の巨匠、シュトックハウゼンが残した電子音楽のCD。音はピアノ、打楽器、テープ音楽で構成される。
グニョッ、ポギュッ、ジュワーン、と不思議な音がひたすら続く30分。デジタルシンセもない時代にどうやってこんな複雑な音を作ったのだろうか?まさに奇怪な音の博覧会、凄い創造力だ。 音楽の構成は難解すぎてよくわからない。決して退屈ではないし、凄まじい何かを感じるのだが、悲しいかな僕自身が音楽を語る語彙が少なすぎて、このCDのよさを語るすべをもたない。とにかく、何物にも似ていない凄い音楽であることは間違いない。僕としてはまず音を楽しむ、そういうスタンスで接していると言えるかな。 ところでこのCD、ジャンルがクラシックではなくポピュラーで出ているのが面白いところ。これがポピュラー音楽だとしたら、まさにポピュラー音楽の極北だね。いわゆるポピュラー=ポップとは対極にある音楽だ。 前衛がもっとも前衛らしく輝いていた時代の、注目すべき遺産と言えるかな。 凄いかっこいい!……けど?
この時代にこの音で作品を発表した勇気、技術はすごい。
けどさぁ、こんな事言ったらアレだけどさ、現代では、誰でもこれににたもの作れちゃうよ? 安っぽいシンセとピアノとレコーダーがあれば誰でも作れちゃうんじゃ? (ハッ! 言ってはいけない事を言ってしまった!) 現代音楽って、ブーレーズが言ってたことだけど、大衆に理解されないことに意味があるんだってね。 確かに現代でも、大衆にはなかなか理解されない音楽でしょう。 でも、現代、その大衆は誰でもこれぐらい作れるんじゃ? 適当にやってもそれらしくなるんじゃ?あと、それらしい理論と楽譜が書けりゃ。 返って大衆に支持されまくられているモーツァルトやベートーベンの音楽なんか、現代でも大衆には作り出すことは出来ませんぜ。 一体どういうことなんだ。 あぁ……、前衛のばか。 不可思議な美しさ
・SF映画のサウンドトラックになりそうな電子音楽で、不可思議な美しさ。好奇心が刺激され、何度も聴きたくなる魔力がある。
・“Kontakte”とは、「楽器による音群と電子音群のコンタクト」などを意味している。 (付記1)ビートルズの”Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”のジャケットにシュトックハウゼンが登場している。推薦者はポール・マッカートニー。”Strawberry Fields Forever”のメロトロンは彼の案で、シュトックハウゼンの影響との説がある。1942年生まれのマッカートニーは1966〜1967年には24〜25歳で、相当な知識欲と吸収力を示している。レノンにもシュトックハウゼンの影響がしばしば指摘される(“Revolution 9”など)。 (付記2)他の音楽と対比するというのはあまりいい聴き方ではないことを承知で言うが、私がまずこれを聴いて連想したのは、ローリング・ストーンズの”2000 Light Years From Home”。 “感性”が聴こえる
20世紀のクラシック現代音楽家は多くの場合、“美”を放り投げたけど、「音程の数学的秩序」というアリバイにはむしろ深くこだわっていたふしがあります。
「どーだ。物凄く気持ち悪いだろう。でもコレは2重フーガになってるんだぜ」、的な。 シュトックハウゼンもその一人ではあります。(楽譜見ると、そんなことまで決めてあるのかと、ぞっとします。) しかしこの人には、“感性”とか“センス”とか、クラシックの人たちが多くの場合とてもいやがる曖昧な言葉でしか言い表せない、独自のカッコよさがあります。(たぶんそれが、今のテクノアーティストにも繋がる一因だと思います) もはやどうやって作ったのか見当もつかない豊かな電子音響に、差し込むように「ガッ!」とピアノが一瞬轟く。サンプラーどころか、アナログシンセも無いような時代だったはずだというのに。 かっこいいです。 聴いてて飽きません。 若い人に「昔の電子音楽を何枚か教えて」と尋ねられたら、必ず薦める一枚です。 前衛的
まさに今日のプログレ音楽家たちに影響を与えた音である。
ただ、やはり一般大衆には理解できない仕上がりである。 彼独自の世界を披露していて素晴らしい。 ただ、もう少し、一般大衆に聞き入れられる仕上がりだと、なお良し。
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