修羅の棲む家―作家は直木賞を受賞してからさらに酷く妻を殴りだした
レビュー ![]() 本を書くのなら、読者に誠実に伝わる文章を。
夫からの凄まじい暴力に耐え続けた生活の淡々とした記述。それが三人称で書かれていることに疑問を感じます。自分の体験を書いているのだから、自分の視点で、一人称で書くことが当然。他人、しかもはっきりわかるはずのない対立した人物の感情を「○○はこう思った」という風に、当然のように書くのは変です。相手が反論できない書籍のような媒体で、客観を装った(一方的な)記述を展開するのはフェアではありません(最初に暴露本を出したのは井上氏側ということですが)。事実ならば犯罪行為に等しいことを、実名を挙げて書いている、という認識を持つべきだと思います。編集者の責任かもしれませんが。
凄惨の一語
「肋骨と左の鎖骨にひびが入り、鼓膜は破れ、全身打撲。顔はぶよぶよのゴムまりのよう。耳と鼻から血が吹き出て…」
本書は、井上ひさし個人の犯罪行為に対する命がけの抗議であると同時に、「進歩的知識人」の欺瞞に対する痛烈な批判でもある。政治問題については崇高な反戦平和の理想を訴えながら、家庭面では卑劣な暴力行為を繰り返すこの偽善。 しかも井上は、マスメディアへの影響力を悪用して本書の出版を徹底妨害した。大手の出版社は「井上先生に書いていただけなくなったら困りますから」と原稿を突き返した。悪辣な圧力行使にも負けず本書の上梓にこぎつけたはまの出版に敬意を表したい。
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