入門経済思想史 世俗の思想家たち (ちくま学芸文庫)
レビュー ![]() 血の通った経済学のために
マルクスやそれ以前の「空想的社会主義者」に関心を持って社会思想系の書物を幾つか読んでいく過程で、これは経済学の歩みも一度おさらいしたほうが良かろうという考えに至り、手に取った一冊。
学生の頃ならまだしも、30代後半サラリーマンの身でこの500ページを読み通すのは正直、骨が折れる。邦訳のクオリティーに関しても、どこをどう読んでも日本語として理解不能な箇所が見受けられる。おそらく学者として原典に忠実に訳そうとするあまり、滑稽な日本語を発明してしまっているのだろう。訳者方々の、学者としての善意には敬意を表明しつつ、本書は入門書なのだから、経済ジャーナリストみたいな人が一気に意訳したほうが良かったかもしれないと感じた。 ただ、そういったマイナス面を補って余りある面白さを本書がたたえていることも確か。スミスからシュンペーターに至る、歴史に名を刻んだ経済学者の生涯とその思想のエッセンスが、鋭さとユーモアを交えた筆致で鮮やかに描かれていく。 興味深いのは「客観的な経済法則の発見」として提示されるそれぞれの経済学者の思想が、実は彼らの出自や境遇を色濃く反映していること、すなわち当人が意図せずとも非常に「主観的」な一面を持つように思われたことだ。個人的には、学者としても世俗人としてもスマートに立ち振る舞い、富と名声を勝ち得たリカードやケインズよりも、陰気で風采が上がらないまま執筆を続けたヴェブレンやシュンペーターに共感を覚えた。 そして著者がこの書にこめた想いも、まさにその「主観的」という部分にある気がする。著者は現代の経済学が、あたかも物理学のように数式で経済運動を分析することに熱中し、それを経済学の「科学的な洗練」と履き違えていることを批判しているが、まったく同感である。経済学の役割が我々の持続的な繁栄のためのビジョンを示すことにあるのだとすれば、それは単なる数式の提示ではなく、経済学者の人生を賭けた「誤解を恐れぬ心の叫び」であるべきだと思う。事実、本書に取り上げられた経済学者は、まさに彼らの思想に「血が通っている」ことによって世の中を動かしたのだから。 欲望と利潤にまつわる歴史的ドキュメンタリー
アダム・スミスからシュンペーターに至るまでの経済学を通観できる教科書。ただし、ただの教科書ではない。経済学者の伝記と学説と、その背景の歴史を一度に眺めることができる、文庫本で500ページにも及ぶ壮大な物語だ。それは、長い因習から解き放たれた欲望の歴史であり、その欲望を満たす利潤の源を探り出そうとした人々の系譜でもある。
16世紀から17世紀にかけてのヨーロッパにおいて、なぜ人類史が始まって以来初めて経済学が必要となったのかという、経済学「前史」の解説から始まり、それに連なる20世紀初頭に至るまでのヨーロッパとアメリカの社会がドキュメンタリーのように描かれている。そうした時代背景の中で、スミスは、マルクスは、ケインズは、どのように育ちどのように生き、何を見て何を社会に問うたのか。一人一人の描写が活き活きとしていて、伝記の部分ではこれが経済学の本であることを忘れさせてしまうほど。何十年も版を重ねて読み継がれているのもうなずける。 また、複数の訳者が協同で改訂を重ねているからだろうが、翻訳も素晴らしい。英文の論理構成を極力生かしながら、適切かつ典雅な訳語を見事にあてがっている。日本語としては必ずしも読みやすくはないが、著者の筆致がどっしりと伝わってくる。経済学の勉強というよりも、登場する思想家たちの思いと、それを語る論理と文章を味わう物語として繰り返し読みたくなる。そのような読まれ方は、巻末で経済学の行き過ぎた「科学化」に警鐘を鳴らす著者としても本望だろう。 経済学史の旅
ロバート・キヨサキ氏が著書の中で、過去の経済を勉強するために良い本だと紹介していたので読みました。
経済学史の旅が楽しめます。 充実した読書を楽しめる
面白いです。マルクス、ケインズ、シュンペーターの人物と思想について語る著者自身が、非常に優れた評論家であり、腕の立つ作家でもあるということでしょう。さまざまな思想の歴史的背景が解り易く説明されている上、筆者自身の評論も公平で説得力があるので、読み進むのが楽しくなります。そして「もっと知りたい」という意欲をかきたてられます。
文系の人にこそ。
アダム・スミス、マルサス、リカード、マルクス、ケインズ、シュンペーター・・・・・・・
偉大な経済学者の思想を紹介している本。 経済絡みの本と言っても、あくまで「思想史」なので、難しい数式等は一切でてこないし、一人一人のエピソードも非常に面白い。 文系の人間でもスラスラスラリーノと読める。 アメリカはもちろん、日本でもかなり有名な経済思想史の入門書であるらしいので、いきなり難しい本はなあ・・・と思う人はぜひこの本からどうぞ。
入門経済思想史 世俗の思想家たち (ちくま学芸文庫)を見てみる
クリエーターは「ロバート・L. ハイルブローナー」「Robert L. Heilbroner」「八木 甫」「浮田 聡」「堀岡 治男」「松原 隆一郎」「奥井 智之」です。 この商品を買った人は他にも「クリティカル・パス―宇宙船地球号のデザインサイエンス革命」、「経済学の歴史 (講談社学術文庫)」、「The Dollar Crisis: Causes, Consquences, Cures / Revised and updated」、「市場社会の思想史―「自由」をどう解釈するか (中公新書)」、「The Sovereign Individual: Mastering the Transition to the Information Age」、などにも興味を持っています。 組織の経済学
本書は、当代一流の経済学者が書いた組織論のテキストブックである。テキストブックと言っても、日本によくある並みの教科書ではない。先端の理論を豊富に盛り込み、記述の密度が高い良書だ。 本書の論述は厳密だ。アカデミックな研究の第一線に触れる内容が含まれている。だから気楽に読み進めるというには、ちょっと重たい内容だ。本自体が700ページにおよぶ大著でもある。しかし経営実務に携わっている人たちや学生が、この際少しまとまった時間をかけて「挑戦」してみようというのなら、おすすめしたい本だ。理論的論述が充実しているだけではなく、興味をそそるエピソードや事例も随所に盛り込まれていて、読者に対する配慮を忘れていない。 経済学者は伝統的に市場における取引に注意を集中してきた。しかし今では多くの経済活動が市場取引ではなく、企業という組織の内部で行われている。その組織内部の現象にスポットを当てて、基本的には経済学的視点に立ち経済学的分析ツールを駆使して議論を体系化している。 強いて言えば、本書で取り上げられているトピックの多くは、やや古い。日本で経営学とよばれるビジネス・リサーチの世界では、すでに主要トピックではなくなったものが、本書のトピックの多くを占めている。経営学では新製品開発、事業創造、ビジネスモデルの競争、経営イノベーションが主要テーマであって、議論の対象がきわめてダイナミックだ。たとえばゲーム理論の応用を考える場合も、本書で議論されている組織内部の現象より、むしろ競争戦略やビジネスモデルとの関連が議論されたら、はるかにおもしろかっただろう。 とはいえ組織論の教科書として、これは第一級の本である。こういう高水準の教科書が出版され、そしてアメリカで売れていることは、かの国の高等教育がきわめて質の高いものであることを示唆している。(榊原清則) レビュー ![]() 組織について勉強したいなら、まずは本書。
本書の内容は膨大で濃密ではあるのだが、厳密な数学による証明や論理展開は殆どないので、数学が苦手の人でも読み込める。よき指導者がいれば、より一層効率的に学習できる。しかし、独学の場合にも、数回の通読をすればかなり「呑み込める」ようになるのでは。
7部構成だが、どこから読んでも凄い本である
この分厚い本を読もうとすると覚悟が要ったが、読み始めると面白さにはまって仕舞う本である。組織論を学ばれる諸氏は当然「必読リストの上位」にランクされているであろう。
私は「情報の非対称性」を論じた部分を拾い読みした時に、この本を知った。「少し高額であるが、思い切って購入しても損はない」と思った。今では、この本の面白さを少しでも多くの人に知ってもらいたいと思っている。 組織分析の必読書
購入を考えておられる方、すでに購入された方、このボリュームに圧倒されること必至と思いますが、思ったよりもスムーズに読めるのは、良質のアメリカ産教科書に共通する、わからせるための工夫が随所にみられることと大いに関係があるでしょう。最近、この点を反映して、日本語で書かれた教科書でも、すべての分野において良書が増えてきているようにも思いますが、ある意味「工場的」な、つまり、学生は優秀な人間とは限らない、と仮定しているアメリカ的人材養成思想に比べて未だしの観があります。
理解には大学初級レベルの数学の知識が必要な箇所が若干ありますが、その部分は難しい方は無視されても大勢に影響はないかと思われます。ほとんど経済学の予備知識はなくとも読破するのに支障はありませんので、一日一章と決めて地道に読めば独学での読了も問題なく可能かと思います。 わたくしは本格的な経済学の教科書を読んだのは初めてでしたが、そのような方にこそお勧めしたい良書だと思います。決してかけた時間を後悔することはないと思います。 難しいことが簡単に
組織論を経済学によって説明すると、大変に難しくなってしまう場合が多いが、本書は、難しいことを簡単に説明している名著だ。そのため、学者から企業人、学生まで、誰が読んでも、得ることが多い。
難しいけど面白い本
実は大学院時代に購入してから読み始めるまでに3年くらい間が開いてしまったんです。「読んでみよう」という意欲を失わせるくらいのボリュームがある本ですから頭から読んでいくには非常に骨の折れることは間違いないと思います。「組織」を題材にした本ですが、組織と従業員との話であったり、組織と市場との関係であったり、組織デザインであったりと、大きく7つのトピックに分かれているので、興味のある部分を掻い摘んで読むのもいいと思います。私は企業財務が専門だったので、第?部の資金調達のところから読み出したのですが、組織対投資家という見方から「情報」をキーワードに展開していく財務の本って少なかったので非常に興味深かったです。全体的見ると複雑な数式を駆使してあって非常に難解な部分もありますが、一読の価値のある本だと思います。
熱狂、恐慌、崩壊―金融恐慌の歴史
レビュー ![]() 金融危機の歴史を縦横に俯瞰する
著者は既に2003年に他界しており、最近の金融危機についての言及は最早ないが、十七世紀から現在までに至るバブルとその崩壊について俯瞰し縦横に論じた今こそ読まれるべき名著。
最近の危機がサブプライム問題に端を発したとか、リーマンショックによるとか言われる中で、実際にはアフガン・イラク戦争による戦争経済のバブルとその終焉が原因であるなどという議論はあまり聞かない。実際に過去の金融危機は戦争、戦争の終結、戦後ブームによって興っていたことも本書で辿れば一目瞭然だろう。しかし、近年の危機が金融調整自身によるものであることもまた明確に読み取れ、現在の危機認識、危機理解があくまで金融部門に絞って考えられていることもある意味ではその方が正当であるかも知れない。逆に今回の百年に一度と言われると言われている危機が実は最も古典的な戦争という非常事態を発端としているのではないか、という懐疑もあってもよいだろう。 仮に今回の危機がイラク戦争原因だとしても、米国内の911があったのであれ今や経済的にしか疲弊して折らず戦争による破壊に対する復興、その復興景気が今後期待できる状況ではないという。やはり危機がかなり原始的な要因に基づいているではないかと考えさせる。イラク復興によっても最早世界経済はおろか米経済ですら回復しないだろう。その意味では、現今のオバマブームが差詰め戦後復興の代替になっているということになる。 結論は、歴史と構造、伝統と変革、そして地域と世界の両方が必要であるという当たり前の事である。黙って見ていても、総浚えで一掃しても、危機の危険度は致命的なまでに悪化するのである。 20世紀を代表する偉大な経済学者によって書かれたバブルと恐慌の歴史。
より本格的にバブルと恐慌の歴史を知りたいなら、20世紀を代表する偉大な経済学者によって書かれた本書をお薦めする。
本書によれば、市場経済は基本的に合理的であり、有効に機能することが多い。しかし、ある「異変」をきっかけに、市場参加者の合理的な行動が攪乱され、バブル発生・崩壊を引き起こす。その「異変」は、たとえば戦争、大きな政治的混乱、などである。最近では、金融機関の規制緩和や制度の革新といったことが「異変」として市場に大きなショックを与える要になっていると説く。 それでは、一体、バブル発生・崩壊にはどのように対処すればいいのだろうか。よく言われるマクロ経済政策は、崩壊につながる異常な好景気をある程度はなだらかにはできるかもしれないが、バブル発生・崩壊を完全に排除することはできないと本書は鋭く指摘する。 バブル発生・崩壊を排除することが難しいとしても、その後の不況が長期化することだけは避けたい。本書によれば、そのカギは「最後の貸し手」の存在にある。「最後の貸し手」は現在、国内的には金融機関に対する中央銀行、国際的には各国政府に対する国際機関や経済大国がその役割を担っている。 もしも、信用収縮を食い止める「最後の貸し手」が存在しない場合、バブル崩壊後の不況は「他の場合よりもずっと長引き、かつ根深いもの」になると本書は説く。 1929年のバブル崩壊をきっかけに世界的な長期不況となった世界恐慌も、「最後の貸し手」の実質的な不在が原因だった。本書では、それまで世界経済をリードしてきたイギリスが衰え、最後の貸し手としての行動能力に欠けていたこと。台頭するアメリカが経済大国としての自覚に欠け、最後の貸し手になりたがらなかったことなどを指摘している。当時はまだIMFのような金融に関する国際機関がなかったこともあって、世界恐慌の被害は人々の想像を超える甚大なものになってしまったのだ。 残念乍ら、今こそ本書を学ぼう。2008年
ムラカミ・ハルキセンセイではないが、「やれやれ」である。
2004年に翻訳が刊行された本書は、いまこそ読むべき本であり(残念乍ら)、人間は全く学習能力のない動物であるであることが判然とした。 最近、ガルブレイスの恐慌論が読まれているらしいが、トータルで見て、本書は最も精度の高い恐慌論であろう。 ところが、本書の著者はマルクスに対する知見はまるでない。と言うことは、本書も底が知れているから困ったものだ。 その点、ハイルブローナーとかのほうが、まだましなアメリカ経済学者であり、ガルブレイスを侮ることはとてもできない。 金融恐慌は再来するか?
邦訳タイトルが「金融恐慌は再来するか」(日本経済新聞社)。南海泡沫事件など有名なバブルとその後に訪れる金融恐慌について、歴史的な考察を加えている。英文は分かりやすく、投資業界に従事する人間なら原書でもぜひ読んで頂きたい。ちなみに、本書中紹介されているベアリング危機はあの有名な20世紀のベアリングをおそった危機ではなく、19世紀の話。
熱狂、恐慌、崩壊―金融恐慌の歴史を見てみる
クリエーターは「チャールズ・P. キンドルバーガー」「Charles P. Kindleberger」「吉野 俊彦」「八木 甫」です。 この商品を買った人は他にも「バブルの歴史―チューリップ恐慌からインターネット投機へ」、「昭和金融恐慌史 (講談社学術文庫)」、「大暴落1929 (日経BPクラシックス)」、「大恐慌のアメリカ (岩波新書)」、「Essays on the Great Depression」、などにも興味を持っています。 |