鼓笛隊の襲来
レビュー ![]() いま、いちばん新作が待ち遠しい現代作家
現実にはありえない設定なのに、言葉選びや話の進め方でリアリティを感じさせてくれる。「SF」「ファンタジー」が一切だめな私ですが、この人の作品は、短編・長編問わず、ぐいぐい引き込まれていきます。本当に上手い。
今回も、短編一つひとつが深く心にしみ入ってきました。たいてい、前向きな結末を迎えるのが好きです。たぶん、人間というものにとても期待している人なのではないかな。 不条理とユーモア
20ページ程度の短編が9話。「鼓笛隊の襲来」でぐっと心をつかまれる。不条理な現象をもなんとか受け入れてしまう日常のしたたかさ。そこにユーモアがちりばめられ、絶品である。「彼女の痕跡展」は、純度の高い不条理劇。存在そのものの不確かさに不安になる。
その後も、たった一つの不条理事象が侵入した現実と日常とが描かれる。ただ、理屈や観念でまとめようとすると、少し浅くなる気がする。彼の作品は、むしろまとまりのない方が闇の深さを感じさせる気がする。 またもや奇想炸裂
第2短編集だが、本作も奇想が炸裂していて楽しめる。基本的に『バスジャック』と同じ
作風だが、今回はアイデンティティの揺らぎが感じられて、ややP・K・ディック風な 話になっている。小説内の物語空間での現実と我々のいる通常世界での現実とのズレ・ ねじれが心地よい。独特な味の文章もプラスに働いている。 いままでの三崎作品のなかで本作が一番とっつきやすいかもしれない。三崎ワールドを 初めて体験する人はこれを最初に読んだほうがいいかも。もっとも今回も相当ひねくれて いるけど。 あいかわらず変則的な話なので、合う人には合う、合わない人には徹底的に合わない作品 ではある。私はこういう作風はドンピシャなので、充分楽しめた。ただ、そろそろ マンネリの傾向があるので、作風を少し変化させたほうがいいとは思う。 これが「物書き」なのだと思う。
やっぱりこのひと天才だ、と常々感じる。
悲しくなるくらい、こういうひとが「物書き」なのだと思う。 傑作であればあるほど、くらくらと眩暈を感じる。 9つの短編からなる本作。 買ってからしばらくもったいなくて、寝かせておいたけど読み始めたらもうダメ。 読まずにはいられない。そして、この気持ちを残しておかなくてはいけない気がする。 まず、全体のタイトルともなっている【鼓笛隊の襲来】から、血の気が引く。 どうして?どうやったらこんな物語が書けるの?緩やかに鮮やかに、読む者に 衝撃を与え、巻き込む。まさにストーリー通りに。 実は三崎作品は、短編も長編も登場人物のインパクトはさほど強くない。 好きなキャラクターは、ときかれても困ってしまう。でも、誰もがしっくりと その世界にはまっていて、「秩序がある」という言葉がぴったりくる。 ひとつひとつの感想を述べるのは愚だ。 三崎の世界は自分で読むことでしか近づけないし、初めて読むその時の 感動的とさえ言いたくなる、突き上げる気持ち・・・それを奪ってしまうことは 例え書評・読書感想文であってもしてはいけない気がする。 わたしの好みでいうと、【鼓笛隊の襲来】の秀逸さは圧倒的だが、 【覆面社員】【象さんすべり台のある街】も順当に好きだ。けどベスト3なら 【同じ夜空を見上げて】と【遠距離・恋愛】だろう。後者は心がじんわりと あたたまるようのだけれど、ストレートにはやってくれない。こんなに短い 話なのに、ひとつひとつだけでエピソードを作れそうな、どこまでも濃厚で なのにまったくそれを感じさせない、すとすとと通り過ぎるような読後感。 前者の話は、似たような話を他の作者で、他の物語で読んだ事がなくはない、 そんな物語ではあるのだけれど、泣いていいのか、微笑んでいいのか、 実に読者を困らせる。心を、掴む。 発想だけ、ストーリーだけ、筆致だけなら、他にも類似の作者はいるかもしれない。 だけど、それらを全て持ち合わせ、美しくタクトをふれるのは今のところ三崎が ダントツだ。絶対に信頼して買える。裏切らない。そばにいて欲しい、そんな本。 相変わらず、冴えてます
最初の1行を読んで、迷わず買った。相変わらずの三崎ワールドが広がっていた。短編一つひとつ、にやにやしながら読み進んだが、読後感は実に爽快だ。一見わけのわからない不条理なことが書いてあるようでいて、実はとても身近にあることだったりすることに気がつく。覆面をして出歩くことが許可される話などは、比較的わかりやすい方だろう。と、後で屁理屈をこねるのも楽しいが、そうでなくても筆力のある作家さんであるから、面白く読ませる。
Feel Love(フィールラブ) Vol.1 (祥伝社ムック)
レビュー ![]() yom yomより○
yom yomより作者も多様だし、オール恋愛小説というくくり
がわかりやすくてかなりよみやすくオススメです。 魚喃キリコの小説や桜沢エリカの漫画が入っている ところなどが「FEEL YOUNG」読者としてもうれしいところ。 次回は12月末という遅さですが、この内容の濃さならそれさえ 待てます。 恋愛小説カタログ風の興味深い1冊
掲載されている作家陣の豪華さに惹かれて作家買い。
三浦しをんや豊島ミホなど、このごろ絶好調の若手作家の 最新の短編が一気にまとめ読みできるっていうだけで贅沢な1冊。 ワイドショーなどで話題になっている佐藤江梨子(サトエリ)と 石田衣良&唯川恵の直木賞売れっ子作家のコラボ小説も スキャンダラスな意味じゃなくて、読物として面白い。 佐藤さんが描く売れない歌手の女の子は、テレビでは「佐藤さん そのもの」みたいに描かれているけど、またご本人とは違う 個性を持った人物としてひとり立ちを作中でちゃんとしているし 石田さんの描く都会的な男性、唯川さんの冷静で都会的で少し 意地悪なところもある40代の女性、と、それぞれのパートで 各キャラが矛盾無く繋がっていて、リレー小説として 秀逸なデキで、次が楽しみな感じ。 次回発売が12月。待ち遠しい。
Feel Love(フィールラブ) Vol.1 (祥伝社ムック)を見てみる
クリエーターは「石田衣良 佐藤江梨子 唯川恵 ほか」「山田 剛史 渡辺真実子 南部香織」「クサナギシンペイ」です。 この商品を買った人は他にも「Feel Love Volume2 (2008 WINTER―LOVE STORY MAGAZINE (2) (祥伝社ムック)」、「Feel Love Volume3 (2008 SPRING―LOVE STORY MAGAZINE (3) (祥伝社ムック)」、「Feel Love Vol.4 (2008 Summer)―Love Story Magazine (4) (祥伝社ムック)」、「Feel Love Vol.5 (2009 Winter)―Love Story Magazine (5) (祥伝社ムック)」、「オトナの片思い」、などにも興味を持っています。 失われた町
レビュー ![]() 判断つかず
装幀と内容が合っていない。
30年に1度、町が消える。 大切な人の消滅を悲しむことができない人々。 平凡な町の生活を描いた表紙。 なので、もっと情緒的な作品かと思っていました。 平凡さの中に潜む危うさとか、喪失の痛みとか。 でもプロローグですぐに気がつくけれど、けっこうハードなSFだった。 意志を持って消滅する「町」こそ正体不明で幻想的とも言えるけれど、これを阻止するべく身を挺して奮闘する人たちは、高度な科学を操る。 もちろん彼らは大きな哀しみを抱えている。 でも、SF的な世界構造やアイテムに気を取られて、あまり感情移入できませんでした。 失われた町「月ヶ瀬」を中心に、30年前に失われた「倉辻」、そして30年後に訪れる新たな町の消滅。 この時間軸が順不同に語られ、60年の間にたくさんの登場人物が深く関わり合っている。 状況を把握して読めたのは最後の2章くらいでした。 日本のような固有名詞ながら、1編の小説だけでは惜しいくらいの別世界が展開する。 この舞台を使って何巻にも何世代にも及ぶ壮大なサーガにだってなりそうです。 ハイテクながら民俗的でもあり、霊感的でもあり、かなり好きです。 結局、人の感情表現と別世界の面白さと両立するのは難しい、と思いました。 それでも日々は続いていくから。
「感情抑制」「消滅耐性」「電域」「汚染対象」…世界観を構築するために出てくる単語が見事にいかにも「お役所用語」ぽくて、すぐにこの物語の世界に馴染むことができた。(「となり町戦争」「バスジャック」でも使われていた手法ですね)
「失う」という圧倒的に大きな出来事の前に、登場人物それぞれが「それでも前を向いて生きていく」という選択をするまでの過程が丁寧に描かれている。全体のトーンとしては暗いが、作者の、人生に対する力強い意志を感じて、私はさわやかな読了感を得ることができた。多少の青臭さはあるのかもしれないけど、読書によって「元気になりたい」「勇気をもらいたい」と考える人にはおすすめ。 『終わりの始まり』から『始まりの終わり』へ。
別れとも、死とも違うその現象は『消滅』
30年に一度、一つの町から人だけが失われる。 前触れも光も音もなく、唐突に[町]の意識によって人々は消滅する。 人民を失った町はその後、地名・写真・記録を全て管理局により抹消される。 『消滅』という汚染を防ぐために。。。 消滅による[喪失]を抱えて生きる人達の思いを次から次へ繋げていく 終わりの無い小説です。 私は基本的に、現代を舞台にした話の中に 超自然的な現象や能力がでてくるのは好きじゃないんですが この話は受け入れやすかったです。 物語が1本の線で繋がったら、もう一度繰り返して読みたくなる本です。 読みにくい少女小説。
近未来SFのような、ファンタジーのような、恋愛小説のような、青春群像のような…
それらをひっくるめた私の感想はタイトルの通り、「読みにくい少女小説だな」でした。 難しい設定や言葉が色々と出てきますが、どこまで必要性があったのか疑問ですし、結局話は解決せずに終わるのでストレスになりました。 メインの登場人物は聡明な美男美女ばかりで、話も美談で終わって… どこをとっても現実味に欠ける、我が身にたとえて真剣に考えることの出来ない内容です。 エンターテインメントとして純粋に楽しむには世界観が曖昧すぎですし。 もう少し、書きたいことをシンプルに展開したらよかったんじゃないでしょうか。 要するに未来の日本が舞台のSFなのだと思う
『となり町戦争』が面白かったので本作品も購入してみました。
しばらく積読になっていたのですが、ふと読み始めたら3日ぐらいで読んでしまいました。 読了できなかった方もあるようなので、好みが分かれるのかもしれませんね。 近未来の日本ぐらいの感じで読み始めたのですが、「戦争」「高射砲台」「居留地」など登場してきて、どうもだいぶ未来の話みたい? 少なくとも150年以上は経っている模様。 私はフィリップ・K・ディックみたいな「いかにも未来」で「登場人物が英米人名前」の小説に慣れているせいか、 日本人名前で現代と同じような町の描写が出てくるとうっかりしてしまいます。 「町」が人々の意思を飲み込み、コントロールし、やがて消滅させてしまう。 これが30年に一度起きている「日本」で、その現象と関わり合ったり闘ったりする人々の人間ドラマ。 読んでいて所々で村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を思い出しました。 作者は読んだことあるのだろうか? 舞台設定や風景の描写は魅力的でした。 感覚的にも、言っていることもよく分かる、気がしました(私にとっては)。 登場人物もなかなか魅力的。特に白瀬さんが好きです。 ただ、「町」の設定がよく分からなかった。 意思を持つというのは分かるんだけど(「世界の終わり」もそういう側面がある) 結局何なんだろう?と。 それは考えなくてもいいのかな。ただ、作者に「町についてはどうものだと考えてい るんですか?」と聞いてみたいような気はします・・・・。 部分的にサイバーパンクっぽい場面もあるけど、そうでもない。 批判的に読めば「詰め込みすぎ?「という感もなくはないですが、結局のところは 面白かったです。こういう世界は好きです。 ただ、読み終わってちょっとすっきりしないというのはある。 それでどうなるのかと、続きが気になるという意味で。
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