クールの誕生
モダンジャズの基礎であるビバップを実践した、ジャズ史上の重要人物、チャーリー・パーカー。彼にアドリブプレイをたたき込まれたのが、若きマイルス・ディヴィスだ。有意義な経験ながら限界も感じたマイルスは、ある意味正反対な、編曲を重視したジャズを考える。それが結実したのが本盤だ。 ギル・エヴァンスやジェリー・マリガンら、有能なアレンジャーとの入念な打ち合わせの末、バリトン・サックスやフレンチ・ホルン、チューバを含む9重奏団の演奏を録音した。熱いアドリブ合戦に対抗して「クール」と称された本作は、関係者の間で大変な話題となった。商業的には振るわなかったものの、このサウンドは直後に盛りあがった50年代のウェストコースト・ジャズなど、のちのジャズ史に多大なる影響を及ぼした。 そんな理屈を知らなくとも、本作は十分に楽しめる。できの良し悪しに差が出る、一発勝負のジャズとは違うのだ。何度聴いても色あせない、すばらしいハーモニーとオーケストラサウンドだ。(高木宏真) レビュー ![]() クールの意味って深いんだな
クール・ジャズの原点といえる作品だが、クールの意味が最初よくわからなかった。ホットに対するクールというと単に冷たいイメージだが、実際には「イケテル」とか「素敵」といった意味があるようだ。歴史的なマイルスの「クールの誕生」は9人のオーケストラによるアンサンブル・ジャズであり、40年代のビ・バップのもつジャム・セッションの延長から生まれた奔放なアドリブの競演とは一線を画している。マイルス自身もガレスピー的なバップの限界を感じ、やたら激しく早く音階を多用するアドリブから、抑制を効かせた独自のスタイルを模索していた時期なのであろう。ギル・エバンス、ジョン・ルイス、リー・コニッツ、ジェリー・マリガンといった知性派で作編曲の能力を持ったミュージシャンとの出会いが大きな要因である。単なる実験作というだけでなく、鑑賞に堪えるすばらしい内容である。古きよき時代のクール・ジャズで選曲も驚くほどいい。深く、かっこよく、心地よい演奏だ。マイルスのソロもさりげないが自信に満ちた新進ジャズマンの名目躍如といったところか。
誕生
1950年3月9日ニューヨークで録音。
マイルス・デューイ・デイビス3世は1926年5月26日にイリノイ州アルトンに生まれた。父はアーカンサス・バプティスト大学、リンカーン大学、ノースウエスタン大学の歯学部を卒業した歯科医であり、裕福な家庭に育った。 そのマイルスがジャズ界において存在を示した最初のアルバムがこのブルーノートからの作品と言えるだろう。マイルスの創ったこのアルバムの音楽は多くのミュージシャンの模倣や追随を生み、それが1950年代前半のマイルス自身の仕事を侵食してしまったと自身自叙伝の中で語っている。 これは始まりであってここからの40年間はマイルスにとって疾走と変貌の連続だった。そのスタートを知る意味で大切なアルバムである。 音の彫刻
ギルはニューヨークに出てきてから、自室を解放してサロンのようにしてミュージシャンと音楽のことについて切磋琢磨したそうである。その梁山泊では、印象派やプロコフィエフといった当時と同時代、もしくは極めて近い時代の音楽も俎上に登っていたと、ギルについて書いた本にはある。優れたクリエイターは、評論家や音楽ファンがイメージするカテゴリーなど関係無しに研究するのは今も昔も変わらない。ビバップは即興の可能性の面白さが魅力だが、いつも「せーの」でアドリブ合戦では、個々の才能のぶつかりあいはあっても、音楽の作り方としてはあまりに努力していないし、おのずから限界があるとギルやマイルスは見たのではないか。ビパップを通過したミュージシャン達が、往事の欧州の音楽を視野に入れながら、アンサンブルワークを再構築したのがこの作品である。録音から55年たった今でもこの作品は多くを語ってくれる。名盤です。
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クリエーターは「マイルス・デイヴィス」「J.J.ジョンソン」「カイ・ウィンディング」「サンディ・シーゲルスタイン」「ジュニア・コリンズ」「ガンサー・シュラー」「ジョン・バーバー」「リー・コニッツ」「ジェリー・マリガン」「ジョン・ルイス」「アル・ヘイグ」です。 この商品を買った人は他にも「'Round About Midnight」、「カインド・オブ・ブルー+1」、「Moanin'」、「チェット・ベイカー・シングス」、「Somethin' Else」、などにも興味を持っています。 |