エディターレビュー
“都会文明に対するアンチテーゼ”。それこそが、『ゴジラ』をはじめとする一連の怪獣映画と、伊福部昭の音楽とを結ぶ本質的なテーマである。ここで怪獣が象徴しているもの、それは原初・土俗・自然の側の圧倒的なエネルギーにほかならない。その猛威の前には、東京タワーの何とひ弱に見えることだろう。そして頼みの綱である自衛隊さえも…。 1914年釧路生まれの大作曲家・伊福部昭は、幼時からアイヌ・コタンに出入りし伝統芸能に親しみ、全国から集まった開拓者たちの日本民謡を耳にして育ったという。13歳のころからほとんど独学で作曲を志した伊福部の作風の背景にあるのは、そうしたアイヌや日本の土着的な音楽である。
「SF交響ファンタジー」は、『ゴジラ』(1954年、本多猪四郎監督)をはじめとする、伊福部昭の数多いSF映画音楽をメドレーの要領で編曲したもの。“破壊のエクスタシー”の一方で、モスラの旋律「聖なる泉」のような南方的エキゾティズムなどもふんだんに盛り込まれており、聴きごたえは満点。広上淳一の若々しく勢いのあるタクトも、執拗(しつよう)な荒々しい土俗的なリズムの反復を生き生きと表現しており、伊福部ワールドへの格好の入門ディスクともなっている。(林田直樹)